私に微笑みかけてくれる貴方を裏切っている自分が大嫌い。



「なぁ

フェンスにもたれ掛かってこっちを見てる宏光に目を向ける。

「何?」

ちゃんってやっぱり彼氏とかいんの?」

「またの話??―……居ないよ」

「まじで!?よっしゃ!」

そう言って嬉しそうに笑う君の笑顔が大好きで、大嫌い。

「告白とか、しないの?」

「え、恥ずかしいし!」

「そっか。」

ちゃんって俺の話してたりするの?」

「嫌…。聞いたことは、無いかも」

「まじ?うわ、ショック……。」

「頑張れって」

そう微笑みながらも心は宏光への罪悪感でいっぱいで。
ゴメンね。ゴメンね。
は、宏光が好き。
の口から出てくるのは大半、宏光の話。
でもそれを知ったら君はどうする?
告白して、付き合うのでしょう?
私なんか用無し、と言った感じで離れていくのでしょう?
だったら、教えないほうが良い。
そんな醜い気持ちが私の心を渦巻いてる。
何でこんな感情がこみ上げてくるのだろう。
可笑しすぎる……。

「サンキュー…。。」

「いいよ。だから諦めないでよね!」

心とは違う言葉が出てくる。
でも諦めて、なんて言えない

「…俺告白してみよっかな―…。」

「…!(告、白?)」

「このままってのも、嫌だし、が応援してくれてるし」

「(え、待ってよ。待って。私は、)」

「なぁどんな風に言ったらいいと思う?」

「(嫌だよ………。)」

?聞いて」

苦しくて耐え切れなくなった私は宏光が言い終わる前に近づいて抱きつく。
―…なんて事は出来ずに、宏光の制服の裾を掴んだ。

?」

「すき……。」

「え、?」

「宏光、すき、だいすき」

「ちょ…っ、冗談だろ?」

「何で気が付かないの?ずっと好きだったのに…。
 何での話ばっかりするのよ…。
 何で、私を見てくれないのよ…。
 好きだよ…大好きなんだよ宏光…。」

どうしようもなく悔しい気持ちがこみ上げてきた。
宏光の顔なんて見れない。きっと困った顔してる。

「―――…、何言ってんの…?」

がそんなに良いの???」

「…そ、れはお前が一番よく知ってるだろ…?」

「なんで、一緒に居た私じゃないのかな…。」

、」

戸惑った声が聞こえた。
顔を上げるとやっぱり困った顔してた。

「大好き…。」

そう言って宏光の唇に自分の唇を重ねた。

「っ…!?」

離れて、宏光の顔を見たら「異常」とでも言いそうな表情。
分かってるよ…。私は異常だ……。
制服を離して扉へ進む。

「可笑しいよ…、お前可笑しい…」

「靴箱に行ったら?―…、居るよ。―――………お兄ちゃん」

宏光の返事も聞かないで扉を閉めた。
そのまま走って教室に向かった。

「宏光…。」

教室に入った瞬間涙が溢れてきて、その場に崩れた。
何で宏光と同じ血が流れているのだろう。
何で宏光と親が同じなんだろう。
何で、宏光を好きになったんだろう。
自分の気持ちに気が付いた時は中学1年の夏。
『お兄ちゃん』を「宏光」と呼び始めたのもその頃だった。兄弟だと認めたくなくてお兄ちゃんと呼ぶのを止めた。
中学3年になって自分の容姿を気にするようになった。
一卵性の双子。顔が似ていると幾度と無く言われた。
それが辛かった。だから同じ色の髪は染めた。
メイクも凝る様になった。
それでも血の繋がりは消えなくていっそのこと血を全部抜こうかと思った時期もある。
無理だとわかっているけど、認めたくなかった…。

「宏、光…。」

立ち上がり外を見た。
と並んで帰る宏光を見た。
涙を何度も拭ってその姿を焼き付けた。
宏光、宏光、宏光………。
愛してました。貴方を。
そして、愛しています。今でも。

『可笑しい』

そうね。可笑しいね。
ごめんなさい傷つけて。
私なんて、居なきゃ良かったね。
これからもきっと私は貴方を苦しめる。
だから……


窓を開ける。
風に煽られ髪が靡く。

「宏光」




「さよなら」






最後に見た景色
(驚いた貴方の顔と地面と、私の血)