学校も終わって家に帰って一段落してた時に携帯が鳴った。
携帯を開くとディスプレイには『藤麓介』と表示されてて思わず綻んだ。
「…もしもし?麓介くん?」
『さん?今日…そっち行ってもいい?』
電話越しにでも麓介君が照れてるのがわかって思わず笑ってしまった。
「いいよ、麓介君の好きなの買っとくね」
『さんきゅ、今学校だから着くころにまた連絡する』
「わかったあ。じゃあね」
通話を終わって制服を脱ぐ。
今日久々に会えるから気合入れなきゃ!
服どうしよう…!この前買ったワンピースでいいかな?
お菓子とかはどうしよう…!
麓介君ご飯食べていくかなあ?材料あったっけ、
お母さんたち今日は旅行で帰ってこないからいつもより長くいてくれたりしないかな…!
いろいろ考えちゃって頭がいっぱいいっぱいになる。
「…駄目だなあ、私。年上なのに、」
はあ〜…とため息が出る。
麓介君は私より2個も年下なのに大人っぽいしかっこいい。
私だって年上らしく大人っぽくなりたいなあ…。
「―…悩んでても仕方ないし、買い物行かなきゃ!」
結局買ったばっかのワンピースを着て買い物に出かける。
麓介君の好きなお菓子とか、私が食べたいのとかご飯の材料とか色々買ってると
麓介君からの電話。
「麓介君?私今買い物してるから着いたら家入ってていーよ」
『…さん、なんかいらねえ奴らが着いてきたんだけど…』
「へっ?」
そう言えば麓介君の後ろでぎゃーぎゃーと聞こえる。
友達でも着いてきちゃったのかな…?
久々だし二人きりのほうがよかったけど…
『でも追い返すから』
「いーよ!連れてきて?ご飯とかいるかなあ、材料たくさん買って帰るね」
『え?』
やっぱり、心の広い彼女になりたいし、たまにはいいよね?
麓介君も友達がいたほうがいいかもしれないし…。
『…わかった。じゃ』
心なしか麓介君の声が低くなった気がするけど気にせずに買い物を続けた。
お菓子も多めに買って急いで家に帰った。麓介君たちもう着いてるかな…?
「ただいま、っ!」
ドアを開けると玄関には靴がいっぱい。
「うわあ…結構来てるなあ」
靴を揃えてリビングの扉に手をかける。騒がしいなあ。
「お前少しは黙ってろよ!」
「うっせー藤!お前俺たちに秘密で高校生の彼女なんて作ってやがって!」
大声で騒ぐ麓介君の声初めて聞いたからなんか新鮮で笑えた。
笑いながら扉をあける。
「待たせてごめんね、ただいま」
ざっとみると5人…かな。女の子も一人いる…!
「あっ、お、お邪魔してます……!」
「こんにちは、お邪魔してます」
「騒がしくてすいません…!」
「お邪魔してますはじめまして…。美作蓮太郎と申します」
「美作てめえキャラ変えてんじゃねーよ」
「おまえこんな綺麗なお姉さまと付き合ってるなんて…!ふざけんなよ!」
「うるせーな」
また言い合いをはじめる麓介君たちに笑いが止まらなくなる。
「あの…いきなりすいません…」
「気にしないで。全然私は大丈夫だから!ところで…麓介君って学校ではあんな感じ?」
「あ、はい。美作くんと言い合いは多いですね…はは…」
「美作くんっておもしろいね。えっと、キミは?」
「僕はアシタバっていいます…!」
「私は鏑木真哉って言います」
「本好です」
「私は。高校1年!よろしくね」
「高校生ってなんか素敵…!」
「え〜?そうかな、真哉ちゃんも大人っぽいし背高いし可愛い!」
「そ、そうですか…!?嬉しいです!」
顔を赤らめて照れる真哉ちゃんが可愛くてほのぼのする。
アシタバくんも小動物みたいでかわいいし本好くんはおちついてるなあ。
4人で話してると麓介君と言い合いしてた美作くんも入ってきて、
最終的に私と麓介君の話とか怖い保健室の先生だとか、たくさん話しをして
気がついたら結構時間が経っていた。
「あ、もうこんな時間…」
「腹減ったなあ〜」
「おーじゃあお前ら帰れ帰れ」
「え、いいじゃん麓介君。私ご飯作るし食べていきなよ!」
「…は」
「え!いいんですか…!?」
「いいよ〜材料たくさん買ってきたんだし」
「よっしゃ〜!綺麗なお姉さんの手作り!」
「美っちゃんよかったね(にこにこ)」
「じゃ、じゃあ私お手伝いします…!」
「えっ!か、鏑木さんそれは…」
「ほんと?嬉しい!じゃあお願いしよっかな〜!」
「はいっ!」
可愛い可愛い真哉ちゃんを連れてキッチンに向かう。(なんか後ろでアシタバくんが焦ってる)
その間に男子陣には新しいお菓子を出してのんびりしててもらう。
「何つくるんですか?」
「ん〜人数多いし簡単なカレーでも」
「わ、私料理あんまりできないんですけど大丈夫ですかね…」
「私が教えるし大丈夫だよ!」
真哉ちゃんは嬉しそうににこにこ笑う。
私も嬉しくてにこにこ笑った。
「…あ、そういえば」
「ん?どーしたの」
「余計なお世話かもしれないですけど…藤くんなんだか機嫌悪い気がして、」
「…麓介君が?」
真哉ちゃんの言葉にちらりとリビングを覗いてみると少し怒り気味な顔の麓介君。
「わ、…やっちゃった…」
「私たちが邪魔しちゃったんで…その、ごめんなさい」
「真哉ちゃんたちは悪くないよ、私が気付けなかったから」
麓介君の事考えられないで…私最低だなあ、
そういえば全然話してないよ…。
落ち込む私を見て、真哉ちゃんが出した材料を冷蔵庫に戻していく。
「ま、真哉ちゃん…?」
「私たち、帰りますね!」
「え、」
「みんな、もう帰ろ!」
「え、なんでだよシンヤ!まだ料理…」
「いいから!準備して!」
そういう真哉ちゃんを呆然と見てるとアシタバくんが心配そうにこっちにきた。
「あの…藤くん、僕たちのせいですいません…」
「え?」
「アシタバくん!帰るよ〜!」
「あっ、うん!」
アシタバくんは頭を下げてみんなと出ていった。
部屋には、私と麓介君だけ。
何もしゃべらない麓介君にびくびくしながら声をかけてみた。
「み、んな帰っちゃったね…」
無反応。
「…麓介、くん?」
無反応。
困り果てた私は、ソファに座ってる麓介君に近寄る。
「ろくすけく」
言いかけてぐら、と体が傾く。
気付いたら麓介君に引っ張られてソファに倒れこんでいた。
「麓介君…ごめ、ん」
「なんで俺が怒ってんのかさんわかってる?」
「え、っと…あんまり話さなかったから?」
「それもあるけど、俺たち会うの久々じゃん」
「うん」
「俺、さんと二人で過ごしたかったんだけど」
「え、」
いつもは照れてそんなことあんまり言わない麓介君の直球の言葉になんだかはずかしくなって顔が赤くなる。
そんな私の顔を見て麓介君の顔も赤く染まる。私、そう言えば押し倒されてるんだなあ…
「「……。」」
お互い恥ずかしくなって、気まずくなる。
さっきの怒ってた表情とは打って変って照れて慌ててる麓介君。…可愛いなあ、
「麓介、くん」
「…なに?」
麓介君の首に腕を回して、ちゅ と触れるだけのキスをした。
「―ッ!?」
ますます麓介君の顔が真っ赤になって、私の顔も熱くなる。
恥ずかしいけど、ちゃんと伝えなきゃ。
「私も、二人きりで過ごしたかったよ…、ごめんね。だから今から…たくさん二人でいよう?」
そう言ってはにかむとぎゅうっと麓介君に強く抱きしめられた。
肩に顔を埋められて、くすぐったくて、どきどきして。
「ろ、麓介くん…!?」
「…やべえ、さんかわいすぎ さん…すき」
「―!…私も、だいすき」
そういってもう一度キスをして、二人で笑って抱きしめあって、
そんな時間をずっとずっと
一緒に作って行こうね
(100303)