彼はいつも笑っている。 笑って愛想ふりまいて、お人よし。 他人が困っていようものならすぐ手を差し伸べる。 そんな彼は皆の人気者。 そんな他人に甘い彼は私には別の顔を見せてくれる。 そうよ、私だけに、よ 「あー、太ぴーまた助けてあげてる」 親友の葵がポッキーで藤ヶ谷を指す。 んー?とポッキーをかじりながら指す方向を見る。 そこにはにこにこ笑って女の子の重そうな荷物をもってあげてる太輔。 「あの女の子絶対太ぴーに狙いだってー。見て、あの太ぴーを見つめる眼」 けらけら笑いながらポッキーをまた食べる。 「葵、何笑ってんの?」 「あー、宏光。見てみて、あれ」 「ん?…ああ、藤ヶ谷?また女ひっかけてるし」 「罪深き男だねえ」 「ちょっと、他人事だからって気楽に話さないでくださいーい」 「藤ヶ谷の性格じゃん。そんな彼氏を持ったことを憎んだら?」 「みっくんだってちょっと歩けば女ひっかけてくるくせに」 「俺は葵一筋だから♪」 「(ぽりぽり)このポッキーおいしいよね」 「は?彼氏のかっこいい一言無視かよ!」 「宏光ー、ポッキー食べる?」 「ポッキーなあ、(愛するポッキーと同じ名前のお菓子って食べ辛い…!)」 ってか俺の一言!とまた騒ぎ出すみっくんと呑気にポッキーを食べる葵。 どこからどう見ても仲のいいカップル。 いいなあ、と言いたくなる時もある。 太輔は他人に優しくて私にかまってくれない時も多い。 そのせいかよく本当に付き合ってるのか、と聞かれる。 「…まあ、いいけどさ」 太輔に猫撫で声で話しかけているだろう先ほどの女子と太輔のほうを見る。 太輔は私の視線に気付き、笑う。 先ほど、女子に振りまいていたのとは違う笑顔。 私だけが見れる笑顔。 それだけで心の奥底にこびり付いてる不安だなんて吹っ飛んじゃうんだから。 「」 「お疲れ。太輔」 「太ぴーおかえりー」 「また媚売られてたな」 面白そうに笑う2人。 私たちは目を合わせてにっこり微笑みあう。 「、次の授業なんだっけ?」 「ん?次は数学」 「そっか。…北山ー」 「はいはい、2人とも腹痛で」 「「ありがとう」」 太輔は自分と私の分の鞄を掴む。 私は残ってたポッキーをみっくんに渡す。ささやかなお礼(あと5本くらいだけど) 「じゃね♪」 2人に手を振って太輔の手を掴む。 向かう所は屋上。 「はあ、」 屋上に着くなり前髪を掻きあげてため息をつく太輔。 私は慣れたその光景ににっこり微笑む。 「お疲れー」 「むかつく」 「太輔が持とうか、って聞いたんじゃないの?」 「そうだけどさ、俺が近く通りかかったら行き成り「重ーい」とかわざとらしく言ってくんの!」 「で、太輔の顔見つめるわけだ」 「そ!ほんとありえねー。」 「人気者も大変だね」 「ってかさあ、いっその事が割り込んでくれればいいと思うんだよね」 「嫌でーす。愛想振りまいてる太輔が悪いんじゃん。処理もご勝手に」 「へーそんなこと言うんだ」 にっこり笑って私の髪を掴む。(もちろん少し痛い) 「実は寂しかったり?」 「ぜーんぜん」 「じゃあ俺あの子の所行っちゃおうかな」 「ご勝手にー」 私の言葉にふっ、と笑って本当生意気、と呟く。 お互い様、と言う言葉は太輔の唇によって阻止される。 荒々しいキスも容赦なく髪を掴む手も冷たい言葉も。 全部全部私のもの。私だけのもの。 さっきあの女は勝ち誇ったように私の顔を見て笑ったけど、 あんたに向けられてる笑顔は偽物。 優しい太輔もお人よしの太輔も全部ぜーんぶ。 本当の太輔は私のもの。 偽物の太輔なんて幾らでもあげる。 本物の太輔は私のものなんだから。 「…っ、ん」 かり、と噛まれた首。 赤くなった首を太輔がなぞる。 「…たい、すけ」 「んー?」 「 続きは?」 「あれ、キスじゃ足りない?」 太輔はわざとらしくきょとん、と問いかけてくる。 その後また意地悪く笑って私を見つめる。 「太輔が構ってくれなくて寂しかったです、ってちゃんと言えればあげる」 「…言うと思う?」 「欲しいくせに」 また笑って私の首に痕を付ける。 私の首筋を辿る舌に高鳴る体。 そうやって焦らして意地悪して、我慢する私を見て楽しむ。 「、顔真っ赤」 「、うるさい…」 「限界?」 「別に、?」 「じゃーやめた」 手も唇も体も、全部離してフェンスに寄り掛かる。 ありえない、と眉に皺を寄せて太輔を見つめると口角を上げて笑う。 「欲しい?だよね、だってこの頃忙しくて2人になる時さえ少なかったし」 にこにこにこにこ。 苛立ちと同時に欲求さえも押し上げてくる。 こいつの頬を殴るに至らないのはこの素顔を見るたび喜びに包まれるから。(他の男だったら容赦ない) 「で?、欲しいんなら言わないと」 「…二重人格」 「AB型だし」 「変態」 「男だし」 「性格悪すぎ」 「の前限定だけどね」 そんな言葉にきゅん、となる胸が自分でも可愛らしいと思う。(…うん。ちょっと気持ち悪い) やっぱり今日も太輔に負けたわ。 「たいすけ、」 「何?」 「…寂しくて堪んない、ちょーだい」 そう伝えると太輔はいつも決まって綻んで笑うんだ。 「しょーがないなあ。」 そう言っていつもみたいに押し倒す太輔が愛しくて愛しくて。 私は今日も『本当』の太輔に釘付け。 私専用のSpice 太輔の痺れるような辛さは私だけのもの (090126) ―――――――――――――――――――――――― うーん? や、普通にドSな太ちゃんが書きたかっただけ← でもそんなにドSじゃない…?あれ? やっぱりみっくんのほうが良かったかなあ?? 携帯で題名を考えてメモってて、 「これ太ちゃんにしよう!」って思ったけど。。 うーん、…みっくんバージョンも書こうかなあ? 曖 |