これが運命というのならば、私は






2日目。

あの後また眠りについた私は夢を見ていた。



『お嬢様』


そう言って手を差し伸べるのは理人だった。

私はそれに答えるように笑って手を掴む。

…そうよ、理人はいつも私の傍にいてくれた。

私の望みをすぐに叶えてくれて私を喜ばせた。

まるで、魔法使いのような存在。

なんて、懐かしいのだろう。



「おい、おい!」



ぱち、と目を開けると豆柴さんがいた。


「…ゆめ」


「?なんか夢でも見たのかよ?…あ!ほら、遅刻するぞ!?」


「…そう、」


「んだよまだ具合わりぃのかよ」


「貴方は、兄弟なのね」


「は?…兄貴のことか?」


「似てないのね」


「優秀な兄貴と落ちこぼれの弟だよ。悪かったな」


無言で首を横に振ると豆柴さんはますます顔を歪めた。


「あんたお嬢様にしては変すぎんだろ」


「そうかしら?…まあ、早く朝食を頂かないと。」


「おー」


朝食を食べて用意を済ませて学校へ向かう。

ヘリの中ふと窓を見る。


「あら、あのヘリは理人とメイさんじゃないかしら」


「そうだな、…メイの奴叫びまくってる感じだな」


豆柴さんは面白そうにメイさんを見て笑う。

その顔が、大切な愛しいものを見るようで。


「…貴方、メイさんのことが好きなのね」


そう言えば一瞬停止して私のほうを勢い良く見る。


「…ッんなわけあるかよ!なんで俺があんな眼鏡うどんのこと!」


「あら、顔が赤いわよ」


「ッ、!」


手のひらで隠して誤魔化そうとしているけど顔が赤いのは変わらない。

なんだか可愛くて笑ってしまった。


「な、に笑ってんだよ!」


「メイさんの執事になりたくて来たのね」


「…うっせぇな」


「豆柴さん」


「…んだよ」


「来ないほうがよかったのかもしれないわね」


「は?」


豆柴さんの顔を見つめる。

来る道を間違えてしまったとしか思えなかった。

メイさんを待っておけばよかったのに。


「貴方、執事を目指しているなら覚えておかなきゃ駄目よ?」


静かな空間。

聞こえるのはヘリの音だけ。


「執事とお嬢様は恋仲になってはいけない、と」


豆柴さんの表情は以前見たことがあるような、(曖昧なのは忘れたいがため?)

軽く眼を伏せて続きの言葉を言おうとすると豆柴さんがふ、と笑った。


「だから来ないで待っておけばよかったって?」


「…ええ。そのほうが私は最善だと思うわ」


「メイがいつ戻ってくるかも確かじゃねぇし、のんびり待っていられるほど気が長いわけでもねぇ」


豆柴さんはもう一度笑ってメイさんたちがいるヘリを見た。


「少しでも近くにいてあいつの手助けでもしてやらねぇとあいつもたねぇだろ」


お嬢様って言葉が最も似あわねぇ奴だしなと付け足して。

その姿がやけに輝いてみえて、。

   苦しくなった。


「恋仲とかそういうの抜きで、普通にあいつを支えてやんねぇと、って思ってんだよ」


なんて綺麗なんだろう。

彼の心は純粋で真っすぐすぎる。

それなら私は


「応援するわ」


笑って答えるしか術はなかった。





東雲メイと柴田剣人


同じ道を歩んで終わりを告げてしまわないことを願う。


私と、  柴田理人のように



(090124)





夢は時に綺麗で残酷