いつも傍に居た俺だからわかることかもしれない。
もしかしたら俺の勘違いかもしれない。
でも確かに俺は思う。
こいつらは何か可笑しい。

「和也〜?」

じゃん。如何したの?」

「差し入れ持ってきた!」

「まじで?サンキュー」

「あ、皆の分あるからね?」

「マジ!?ちゃんサンキュー!!」

「聖君テンション高いー!」

ほら、今。
カメとちゃんは時々、目を合わせて幸せそうに微笑みあう。

「皆がこの前食べた言っていってたから買ってきたの」

「本当にカメの妹とは思えない気遣いだよなー」

「は?何それ上田!お前もう食うな!」

「和也怒らないのー」

亀梨。それが彼女の名前。
亀の双子の妹でちゃんも同じく芸能人。

ちゃん、ドラマの撮影どう?」

「楽しいよー!相手役の人も優しいし」

今もそうだ。
ちゃんが他の男の話題を出すたびに少し悲しそうな顔をする。
ちゃんが他の男と話していると、とても真剣に話している内容に耳を傾ける。

「…赤西?」

声のしたほうを向くと上田が不思議そうな顔して俺を見てた。

「なんか一生懸命カメ見てたけどどうかした?」

「いや、なんでもねぇ」

「ふーん。」

上田はいつも冷静に物事を見てるから、気がついているだろう。
俺がちゃんを好きって事。
まあ、カメとちゃんの関係までは気が付いてないだろうけど。
上田はいつでも相談のる、と言って中丸達の輪に入っていった。
その言葉は嬉しいけど、相談する事は無いだろうな。と心の中で思った。
今俺が考えてる事は最低で最悪な事。


撮影も終わりメンバーと別れて1人歩いていた時、忘れ物に気が付いてさっきの部屋まで戻ったら中から声が聞こえた。

「和也、人来る…。」

「いいじゃん。な?」

「ん…。」

静かに少しドアを開けて覗いて見ると思ったとうりカメとちゃん。
2人は抱き合っていて見つめあったあとキスした。
心が痛んだと同時に「証拠」が掴めた、なんて思った。
わざと音を立ててドアを閉めてその場を去る。
2人の焦った声が聞こえた。もう後戻りは出来ねぇ、な。


翌日、俺はちゃんを家に呼び出した。

「赤西君?話ってなあに?」

なんてのんきな事を聞きながらちゃんはやってきた。

「んーまあ、ちょっとね」

「そっか。あ、でも今日和也と買い物行くから時間あんまりないけど…。」

嬉しそうに笑うちゃん。
その笑顔を俺は今から壊そうとしてるのに。
…でも、手を引く気は、無い。

ちゃんとカメって仲良いよな」

「兄弟だもんね〜」

「カメが羨ましい」

「あはは、冗談でも嬉しいよ」

「冗談じゃねぇって言ったらどうする?」

ちゃんは少し目を見開いてこっちを見た。

「俺さ、ちゃんの事好きだから、付き合って?」

「…ごめんなさい」

ちゃんは深々と頭を下げて立ち上がった。

「私好きな人がいるの…。ごめんね。今日はもう帰るね。」

そう言って足を進めるちゃんの背中を見つめて、声を漏らした。

「カメ」

びくり、と肩が揺れた。
わかりやすい反応に笑ってしまった。
この様子だと上手くいきそう、だな。

「か、和也が…何?」

振り向かずに言う背中が小さく見えた。
手が、少し震えている。

「好きな人ってカメだろ?」

「え…、や、やだ、赤西君。私と和也は兄弟、」

「見ちゃったんだよね」

その一言でちゃんは動きを止めた。

「な、にを」

「この前楽屋で、抱き合ってキス、してたよな」

「――ち、がう」

「世間にバレたら相当やべぇんじゃねぇの?…カメは事務所に居られないだろうし、ちゃんも…。」

俯いて震えるちゃんの頬を両手で包んで上を向かせた。
喋ろうとする唇が酷く震えている。

「や、だ…。おねがい…。だれにも、いわない、で」

この言葉を、待ってた。

「じゃあ俺と付き合って?」

涙がちゃんの頬を伝った。

「え、…?」

「黙ってて欲しいんでしょ?…俺と付き合ってくれたら、ね」

涙が俺の手を濡らす。
頭を微かに左右に振った。

「何、言ってるの…?」

「カメと、別れて?」

涙がとめどなく溢れていく。
ちゃんはそれを拭う事もせず、目を見開いて俺を見ていた。

「や、だ…!和也と別れるなんて…、やだやだ、嫌…」

「じゃあ社長らへんに言ってもいい?」

そう言って微笑むと信じられないものを見るように俺を見て俺に縋りついた。

「そ、れだけは…それだけはやめて…ッ!和也に迷惑、掛けたくない…!!!!!」

「―――OKって事で良いよな?」

「…か、ずや」

「兄弟で恋愛、なんて苦しかったろ?俺ならちゃんをちゃんと幸せにするから、さ。」

「和也と別れる、なんて…私…ッ耐え切れないの…本当に好きなの、愛して、るの…!おねがい、おねがいします…ッッ!!」

泣いて、叫んで、縋ってそんなちゃんに心が痛む。
でもさ、俺は君が欲しいんだ。
君がカメを愛して止まないのと同じように俺も君を愛して止まない。
君が欲しくて欲しくてたまらなかった。
君が俺の物になるならどんな汚い手を使っても構わない。
そう思ってたから。
だから、諦めて俺のとこに居て。









泣  き  叫  ぶ  声  は 





木  霊  し  て 





響  く 


俺の心には届かないみてぇだ。…ごめんな